医療クリニックの新たな可能性:Zi-Chen Linによる「Gracious Flow」

伝統的な医療空間を超越した、患者の心地よさを追求したデザイン

医療クリニックの空間デザインというと、冷たく無機質なイメージが先行することが多い。しかし、デザイナーのZi-Chen Linが手掛けた「Gracious Flow」は、その常識を覆す。患者の気持ちを最優先に考え、安心感と開放感を大切にしたこのプロジェクトは、医療空間の新たな可能性を提示している。

「Gracious Flow」の最大の特徴は、その流れるようなデザインにある。曲線を多用した空間構成は、患者のストレスを軽減し、心地よさを提供する。また、診察室と治療室はガラスで区切られ、透明性を確保。自然光がたっぷりと入る空間は、白とグレーの色調で統一され、落ち着いた雰囲気を醸し出している。

このプロジェクトでは、患者の視点を最優先に考えた。待合室はソファと椅子で構成され、患者がリラックスできる空間を提供。また、天井やパーティションに曲線を用いることで、伝統的なクリニックの硬直した空間感を排除。このアーチ状のデザインは、空間内の方向性を示すと同時に、空間効果を最大化する。

このプロジェクトの素材選びもまた、特筆すべき点である。壁は白を基調とし、人々の動線を導く役割を果たす。また、レセプションデスクのデザインに合わせて、柔軟性のある人工石を使用。さらに、純白のインテリアに温かみを加えるために、ブラウンのウォールナットのトリミングを採用している。

このプロジェクトの最大の課題は、限られた空間内で、各部屋の配置と制御回路の配置をどうするかだった。特にロビーは、5つのユニットが交差する複雑な空間で、透明性、機能性、視覚的なバランスを保ちつつ、5つのユニットを一つの空間に統合する必要があった。

このプロジェクトは、2020年4月に台湾の新北市で完成。70平米の空間に、ロビー、受付エリア、診察室2部屋、大・小の消化器内科手術室、超音波検査室、X線室、診察室、回復室、ラウンジ、研究室、オフィスが配置されている。

「Gracious Flow」は、2022年にA' Interior Space, Retail and Exhibition Design Awardでブロンズ賞を受賞。この賞は、芸術、科学、デザイン、技術のベストプラクティスを取り入れ、強力な技術力と創造力を発揮し、生活の質を向上させ、世界をより良い場所にするデザインに授与される。


プロジェクトの詳細とクレジット

プロジェクトデザイナー: Zi-Chen Lin
画像クレジット: Calm Arts Design
プロジェクトチームのメンバー: Zi-Chen Lin
プロジェクト名: Gracious Flow
プロジェクトのクライアント: calm arts design


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